105回目の夏、開幕へ 舞台は新球場・きたぎんボールパークへ 大会を沸かせる注目校と注目選手たち 岩手 - 高校野球

第105回全国高等学校野球選手権岩手大会が7月7日に開幕。新球場元年となる2023年の夏。世代最強スラッガーを擁し昨秋から公式戦無敗の花巻東か。夏連覇を狙う一関学院か。それとも公立勢の29年ぶり優勝か。一投一打に燃える熱い季節。いよいよ高校球児たちの戦いが始まります!

大会を沸かせる注目校
~花巻東・盛岡四ブロック~

花巻東ブロック

大会の軸となるのは第1シードの花巻東。昨秋から県内公式戦無敗で春県大会では5連覇を達成しました。高校通算本塁打140本を超える佐々木麟太郎選手を中心とした打線は県内屈指。それでも佐々木洋監督が「守りのチーム」と語る通り、2年生ピッチャーの最速147キロ右腕・小松龍一投手を柱に、最速144キロの本格派右腕・北條慎治投手、技巧派左腕の葛西陸投手など多彩な投手が揃います。春季県大会の戦いぶりを振り返るとチーム盗塁数が3個ながら長打率は4割近くをマーク。充実の投手陣と強打で夏の頂点を目指します。

同じ準々決勝のブロックには創部7年目にして初のシード権を獲得した盛岡誠桜が入りました。春は優勝校の花巻東と接戦も繰り広げました。秋春連続ベスト8入りしたチーム力はもはやダークホースではありません。何と言っても注目は昨秋ノーヒットノーランを達成したエースの高橋脩投手。サイドから最速142キロをマークし、ムービングやスライダーなども武器に凡打の山を築く好投手です。初の聖地へ「ゼロではない」と選手たちに話す名将・石橋智監督。虎視眈々と甲子園に続く道を歩みます。

その盛岡誠桜に昨夏勝利した水沢も同ブロックに。絶妙な緩急が持ち味の小野寺雄大投手、好守備や好リリーフも光る藤澤朔選手らを中心に粘り強く戦い、競り合いでの強さを発揮。胆江から初の甲子園を目指します。

そして開会式直後の開幕試合を戦う盛岡市立花泉。盛岡市立の最速136キロでキレがあるボールが持ち味のエース・若狹昊明投手、昨夏マウンドも経験した花泉の2年生エース・佐藤蕾晟の投げ合いも注目です。

盛岡四ブロック

花巻東とともに上位のシードで同じ準決勝の山に入ったのは第4シードの盛岡四。最速135キロの好左腕・櫻田絢投手を中心とした守りは出場校の中でも屈指。特にショートの藤澤真一郎選手ら内野陣はそれぞれが軽快で捕球から送球まで無駄がありません。また春季県大会で打率5割超をマークした村松怜央選手が引っ張る打線は、ここぞの勝負強さがとても印象的。夏の甲子園出場最後の公立校が29年ぶり頂点を見据えます。

盛岡四とともにこの準々決勝の山に入ったシード校は大船渡です。エースは佐々木怜希投手。言わずと知れた令和の怪物・佐々木朗希投手(現 千葉ロッテ)の実弟です。本格的な投手転向は昨秋ながらポテンシャルは無限大。最速は139キロをマークし、今春は強豪・盛岡大附相手にも好投して勝利に貢献。チームにシード権をもたらしました。またサウスポーや技巧派なども揃う多彩な投手陣で打線も粒揃い。攻守充実の戦力で39年ぶりの聖地を目指します。

また、初戦から伝統校対決となった黒沢尻北福岡の対戦も注目です。夏10度優勝を誇る福岡は1年時から主力として活躍してきた選手も多く、昨秋と今春は県北地区1位に。特に立崎翔太投手と向川原煌投手の二枚看板は非常に力があります。対する黒沢尻北は秋春地区予選敗退で期する夏。昨秋は専大北上や水沢など同地区のライバルたちとも接戦を繰り広げました。そしてなんといっても両校には選手の背中を押すバンカラ応援の存在も忘れてはなりません。グラウンドとスタンドもひと際熱い夏初戦になりそうです。

そして同じ山では俊足巧打の佐藤孝大選手や巧みなバットコントロール光る畠山瑞輝選手がいる夏に強い盛岡一、強打者・玉沢聖也選手擁する久慈東、1年時からマウンドに上がっている経験豊富な佐々木悠大投手が投打で牽引する千厩も楽しみな存在です。

大会を沸かせる注目校
~一関学院・盛岡三ブロック~

一関学院ブロック

夏連覇に挑む第2シードの一関学院。昨夏甲子園メンバーは9人が残り、投打で戦力は充実。投手陣ではアンダースローで聖地も沸かせた小野涼介投手をはじめ、140キロを超えるストレートが武器の本格派右腕・寺尾皇汰投手、春季大会でエースナンバーを背負った高橋佑輔投手ら経験豊富なピッチャーが揃います。また野手陣も主将の原田大和選手を中心に、勝負強い小野唯斗選手や強打の菅野千陽選手らが並ぶ切れ目がない打線はライバルたちの脅威に。部員98名の大所帯ながら”全員野球”を掲げ、チーム一丸となって挑む夏。目指すは先輩たちが成し得なかった甲子園ベスト8。夏8度目の聖地を懸けた前回覇者の挑戦が始まります。

一関学院とともに同じブロックに入ったシード校は春2年連続ベスト8の水沢工。一昨年夏にみせた38年ぶりのベスト4進出の快進撃も記憶に新しい実力校です。打と守の柱はショートを守る鈴木塁主将。身体能力の高さを生かした守備とパンチ力のある打撃でチームを牽引します。そして投の柱はエース左腕の森岡琉依投手。試合経験も豊富で、ランナーを出しても動じない落ち着きと巧みな牽制技術を持ち合わせています。投打に頼れる大黒柱を擁して夏に挑む水工。胆江勢悲願の聖地へ突き進みます。

そして同じブロックにはノーシードから優勝を狙う盛岡大附。「攻撃力だけは常に持っておきたい」と語る関口監督の言葉通り、チームカラーは失点を上回る得点で打ち勝つ野球を目指す“強打の盛附”です。そして最速147キロを誇る本格派右腕の橋本旺大郎投手がベンチ入り。一昨年の王者が夏に懸けます。

またその盛岡大附と初戦をむかえるのは伝統校の一関一。さらに三拍子揃った強打の大坊飛翔選手がいる昨夏準優勝の盛岡中央本格派右腕・菅野竜輝投手擁する高田も同ブロックに。どこが勝ち上がってもおかしくない激戦ゾーンです!

盛岡三ブロック

この春、東北4強の快進撃で最も高校野球を沸かせた公立校が第3シードの盛岡三です。注目のスラッガー阿部蒼流選手を4番に据えた打線は春の県大会でチーム打率3割3分1厘をマーク。また選手たちは考える野球を実践し8盗塁をマークし失敗は0。なかでも玉川仁乃助選手は県大会で単独ホームスチールを鮮やかに決めました。そして何と言ってもエースとして活躍した2年生ピッチャーの藤枝歳三投手。最速142キロのストレートやカットボールもさることながら最大の武器は制球力。春の県大会では26イニングを投げて四死球はわずかに1個でした。そして140キロ超の力強いストレートが持ち味の杉澤直輝投手や技巧派サイドの要永琉成投手らも支える投手陣は強豪私学にも引けを取りません。岩手の高校野球の歴史を変える戦い。34年ぶりとなる夏の甲子園出場を目指します。

盛岡三と同じブロックに入ったシード校はくしくも春の県大会準々決勝で激闘を繰り広げた専大北上。夏は5回の甲子園出場を誇るものの、まさかの6年連続初戦敗退。その分今年に縣ける思いも強いチームを支えるのは最速144キロが武器のエース板垣翼投手。そして杉山優風投手や中澤昊哉投手ら多彩な投手を抱えており、それを盛り立てる守備陣も鍛えられています。かつてWBSCのU-12ワールドカップ日本代表で4番を担った髙橋昇聖選手の活躍も注目。夏のジンクスをはね返して捲土重来を狙います。

そして大船渡東・住田の戦いぶりも目が離せません。今春は連合初の大会初白星を飾りました。チームのなかでも特に齊籐桜汰今川楓紀選手の豪打は魅力的。期待感を抱かせるスイングにはロマンを感じます。春県大会1回戦と同一カードとなった一戦、昨秋の4強・一関二と同8強の花巻南の試合は初戦屈指の実力校対決です。

躍動が楽しみな選手たち

これまでの観戦記から夏の舞台で活躍が期待される選手たちを紹介します。グラウンドでお目にかかれていない好選手もたくさん。まだ見ぬ好選手の活躍への期待は胸の内へ。

投手

北條慎治(花巻東・3年)
ケガから復帰し最後の夏に懸ける本格派の長身右腕。角度のあるストレートは最速144キロをマークし、落差のある変化球も大きな武器。大船渡・第一中の軟式野球部では仙台育英の仁田陽翔や大船渡の佐々木怜希らとチームメートとして切磋琢磨。

小松龍一(花巻東・2年)
今春大きく羽ばたいた好投手で最速147キロのストレートと鋭く落ちるフォークボールを駆使する本格派。まだまだ伸びしろも感じる逸材。

小野涼介(一関学院・3年)
昨夏甲子園も沸かせたアンダースローで、磨かれた緩急と制球力を武器に次々とバッターを打ち取る。今夏は背番号1を背負う。

高澤奏大(一関学院・2年)
昨夏1年生ながら長身と長い腕を目一杯生かした力強いフォームからいい投げっぷりをみせた注目の左腕。189cm95kgの恵まれた体格から今夏さらに成長した勇姿に期待。

藤枝歳三(盛岡三・2年)
最速142キロのストレートやカットボールもさることながら最大の武器は制球力。春の県大会では26イニングを投げて四死球はわずかに1個。ここぞでギアを上げた時のピッチングは打者を圧倒する。

櫻田絢(盛岡四・3年)
大会注目の好左腕。腕が遅れて出てくるゆったりとしたフォームは打者がタイミングを合わせづらく、そこから最速135キロのストレートと緩急のある変化球で打者を抑える投球は見事の一言に尽きる。

高橋脩(盛岡誠桜・3年)
昨秋にはノーヒットノーランも達成した好投手。右サイドから最速142キロをマークし、キレのあるムービングやスライダーなどを駆使して凡打の山を築く。完投はもちろん、連投でも力を発揮する鉄腕ぶりも魅力。

佐々木怜希(大船渡・3年)
投手転向は昨秋ながら最速139キロを計測したポテンシャルが高い好投手。今春の盛岡大附戦の勝利を糧にさらに成長した投球に期待。また野手として守備につけば俊足を生かし広い守備範囲を誇る。令和の怪物・佐々木朗希投手(現 千葉ロッテ)の実弟。

森岡琉依(水沢工・3年)
試合経験豊富な好左腕で、投球テンポも良く、緩急を駆使した投球で試合を作る。ランナーを出しても動じない落ち着きと巧みな牽制技術を持ち合わせる。

板垣翼(専大北上・3年)
最速144キロのノビのあるストレートと多彩な変化球が武器の好右腕。昨秋東北大会の山形中央戦では敗れたものの被安打1の好投をみせている。

杉山優風(専大北上・3年)
投げっぷりのいい右腕。ストレートでも変化球でも三振を奪うことができ、チームに勢いをもたらすピッチングも魅力。

橋本旺太郎(盛岡大附・3年)
最速147キロの力強いストレートとキレのあるスライダーで打者を圧倒する本格派。

佐々木清尊(花巻南・3年)
変化球でバッターのタイミングをずらす細身の好左腕。ピンチでも動じないマウンド度胸も武器。

小野寺雄大(水沢・3年)
ストレートとカーブのコンビネーションやクレバーな投球で打者を翻弄する技巧派右腕。

若狹昊明(盛岡市立・3年)
最速136キロのノビのあるストレートに100キロ前後の変化球を織り交ぜて凡打を積み重ねる好投手。

三浦大人(一関二・3年)
昨秋県大会でチームをベスト4に導いたアンダースロー。タイミングが取りづらいフォームと緩急を生かし打たせて取る投球が真骨頂。

菅原春紀(一関一・3年)
鋭い腕の振りから130キロ台後半のストレートとキレのある変化球で三振を奪う注目ピッチャー。

菅野竜輝(高田・3年)
ノビのあるストレートを軸にバッターをねじ伏せる力強いピッチングが魅力の本格派右腕。

古舘興清(宮古商工・3年)
130キロ中盤のストレートを武器に強気のピッチングが光る本格派。また打撃でも長打力があり投打で注目の好選手。

佐々木悠大(千厩・3年)
1年時から公式戦のマウンドに上がる経験豊かな好投手。130キロ台後半をマークするストレートと手元で曲がる変化球で打者を翻弄。打っては中軸も担う打力も魅力。

佐藤蕾晟(花泉・2年)
1年夏のマウンドも経験している伸びしろ十分の注目投手。キレのある変化球と制球力で2度目の夏に挑む。

野手

小原翔吾(一関学院・3年)
多彩な投手陣を引っ張る扇の要。盗塁を阻止する矢のようなスローイングも素晴らしい。

田村悠人(盛岡三・3年)
監督が”太陽な主将”と評する人柄でチームをまとめ、打ってはクリーンナップ、守っては投手の持ち味を引き出し最少失点で攻撃に繋げる注目選手。

鳥谷部佑聖(盛岡四・3年)
守っては好投を支える巧みなリードが光り、打ってはリードオフマンとして活躍しチームに勝利をもたらす。

近藤大雅(専大北上・3年)
県下でも屈指の強肩強打の注目キャッチャーで、個性豊かな投手陣を好リードで引っ張る。

宮野紘(花巻北・3年)
ランナーを制する素早い送球や4番も担う打撃力が持ち味の好捕手。

千葉穂高(盛岡一・3年)
主将としてリーダーシップを発揮する一方、試合経験に裏付けされたリードで投手陣を牽引。

佐々木麟太郎(花巻東・3年)
高校野球ファンのみならずともその名が広く知れ渡っている世代屈指のスラッガー。高校通算本塁打はなんと140本。プロをも凌ぐ打球スピードはまさに圧巻。中学時代には生徒会長も務めた人柄で、グラウンド内外での真摯な姿勢も素晴らしい高校球児。

熊谷陸(花巻東・3年)
1年時から活躍する注目選手でショートとピッチャーをこなすユーティリティープレイヤー。佐々木麟太郎の前でチャンスメークの役割も果たしながら、得点機には勝負強さもみせる。

原田大和(一関学院・3年)
一関学院といえば伝統の堅守。そのショートとして軽快なフィールディングをみせ、打線ではリードオフマンとして鋭い打球を放ちチャンスメークする。また主将としても大所帯をまとめあげるリーダーシップを発揮。

阿部蒼流(盛岡三・3年)
勝負強さと長打力、そして確実性を兼ね備えた強打者。春の県大会と東北大会の計8試合全てでヒットを放ち、29打数15安打で打率5割超をマーク。

村松怜央(盛岡四・3年)
広角に打ち分けるヒットメーカー。2番打者として春季県大会では15打数8安打、長打も本塁打を含む3本を放つ活躍。

伊藤新太(盛岡大附・3年)
1年秋からショートを守り続ける実力選手。広い守備範囲でチームを支える一方、当たり出したら止まらない打力も持ち味で春季県大会では8打数で5安打を記録。

粕谷秋偉(盛岡大附・3年)
前チームでは中軸も担ってきた強打の盛附を象徴する選手の一人。鋭い打球を放つバッティングと次の塁を狙う果敢な走塁がチームに勝利をもたらす。

鈴木塁(水沢工・3年)
1年夏からベンチ入り。現チームでは主将としてチームをまとめる大黒柱。高い運動能力を生かしたフィールディングと巧みなバットコントロールを武器に躍動。春季県大会では打率4割超をマーク。

髙橋昇聖(専大北上・2年)
WBSCのU-12ワールドカップ日本代表で4番を務めホームランを放つなど大活躍した選手。岩手の地で高校野球公式戦デビューへ。

大坊飛翔(盛岡中央・3年)
走攻守の三拍子揃った注目のプレーヤー。長打力もあるバッティング、広い守備範囲や盗塁で光る俊足、そして矢のような好返球と見どころ満載。

原田青空(花巻南・3年)
チャンスに強い打撃で打線の中核を担う一方、広い守備範囲を誇るセンターとして好守もみせる大黒柱。また主将としてもチームを引っ張る。

玉沢聖也(久慈東・3年)
ボールを芯でとらえる力が際立つスラッガー。きたぎんボールパークではバックスクリーンに叩き込む一発を放つ。

佐藤孝大(盛岡一・3年)
選球眼よく際どいボールはカットし、好球をヒットゾーンに運ぶ俊足巧打のいぶし銀。

藤澤朔(水沢・3年)
打撃では優れたバットコントロールでボールをとらえ、ファーストの守備では見事なハンドリングをみせる。そしてピッチャーもこなす万能選手。

今川楓紀(住田・3年)
力強いスイングと長打力が魅力的な注目の右のスラッガー。チャンスにも強く頼りになる4番打者。

齊籐桜汰(住田・3年)
打球の飛距離が凄まじい強打者。またマウンドにあがれば変化球を巧みに操り打者を翻弄する二刀流。

(敬称略)

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