第104回全国高等学校野球選手権岩手大会が7月8日に開幕。2011年から花巻東と盛岡大附の双璧が王座を分け合ってきた夏。秋春に続く3季連続県制覇を目指す花巻東か。夏連覇を狙う盛岡大附か。それとも28年ぶりの公立校優勝か。52年の歴史に幕を下ろす岩手県営野球場にとっては最後の夏。歓喜に包まれるのはどのチームか。今年も球児たちの熱い戦いが始まります!
大会展望~花巻東ブロック~
秋東北王者で明治神宮大会ベスト4の第1シード・花巻東が頭一つ抜けている印象で、佐々木麟太郎選手や田代主将をはじめ、熊谷選手や小沢選手ら強打者がずらりと並ぶ打線は歴代最強とも評されており抑え込むのは難しい。対強力打線でクローズアップされている戦い方にマシンガン継投があるが、まさに多彩な投手陣で継投策を武器にしているのが一関一。春季地区予選では7投手による継投で一関学院との競り合いを制した。継投策という視点でみるとタイプの異なる投手を擁するシード校・大船渡の戦いぶりも注目だ。
また強豪私学との戦い方を熟知している石橋智監督が率いる盛岡誠桜もマウンド経験豊富な速球派エース金森投手を擁しており台風の目となる可能性を秘めている。そして大会屈指の好投手・齋藤響介投手擁する盛岡中央は、中学時代から活躍していた選手らも力をつけて1999年以来2度目の聖地を目指す。
さらにこのブロックでは昨夏38年ぶり4強の水沢工、最速141キロの長身右腕を擁する昨秋4位の花巻南、攻守に力のある盛岡商や強打の盛岡市立らがひしめく。なかでも第4シード・盛岡三は目が離せない。春季県大会では強風が吹き荒れた3位決定戦こそ守備の乱れが続いたが、その前の試合までは失策1と堅守も際立っており、ダブルエースを擁する投手力と得点力が高い勢いのある打線も光る。何よりもベンチ入りした選手20名を積極的に起用し一丸で戦い抜いた春の経験は大きい。
大会展望~盛岡大附ブロック~
春決勝の雪辱を期す第2シード・盛岡大附。代名詞ともいえる“強打”を受け継ぐ中沢主将や今野選手、船生選手に加え、チームバッティングに優れる大里選手らが並ぶ打線は例年とは違う色合いの強さを見せる。そして第3シードの久慈も力がある。2度のケガから努力を続けて復帰した小川投手と最速136キロの小向投手の二枚看板、さらに守備力の高いセンターラインを武器に粘り強く戦う久慈は競り合いにも強く“公立の雄”として夏へ挑む。
また初戦の顔合わせをみても好カードが多く、シード校では双子の茶家兄弟擁する福岡が夏に強い盛岡一、選手層の厚い盛岡四は6年ぶりの初戦突破を目指す専大北上とぶつかる。昨秋準優勝の久慈東と同8強の黒沢尻工も力のあるチーム同士の一戦。最速130キロ台後半をマークする屋形場投手がいる伊保内・軽米連合の戦いも楽しみ。昨夏校史に新たな1ページを刻んだ宮古商工も試合経験豊な三田地主将がチームを引っ張り上位をうかがう。
ノーシードのなかでも注目校は一関学院と千厩。一関学院は投打ともに力のある選手が揃っており独自大会だった夏以来の頂点を狙う。千厩も非常にまとまりのあるチームで、好投手の系譜を受け継ぐエースの佐々木投手や攻守の要となる佐藤主将らを中心に守備からリズムを作る。何よりも昨秋は一関学院に勝利し、今春は盛岡大附と接戦を繰り広げた自信が夏の戦いへ繋がるのは間違いない。
躍動が楽しみな選手たち
これまでの観戦記から夏の舞台で活躍が期待される選手たちを紹介します。グラウンドでお目にかかれていない好選手もたくさん。まだ見ぬ好選手の活躍への期待は胸の内へ。
投手
齋藤響介(盛岡中央・3年)
プロ注目の最速152キロ(今夏更新)の右腕。1年生の時には3試合連続無安打試合の離れ業もやってのけた県内屈指の好投手。クイックやセットを使い分ける器用さや縦横の変化球に加えて、俊敏かつ状況判断に優れたフィールディングや巧みな牽制も一級品のエース。
柿澤佑多(花巻南・3年)
長身で独特なフォームから繰り出される最速143キロ(今夏更新)のストレートと落差のある変化球は秀逸。ピンチではギアを上げた投球で打者を圧倒。
金森壮大(盛岡誠桜・3年)
昨夏もエースナンバーを背負ったマウンド経験豊富な本格派。最速141キロ(今夏更新)のストレートにスライダーやチェンジアップを織り交ぜて三振の山を築く。
萬谷大輝(花巻東・3年)
センバツのマウンドも経験している技巧派左腕。コントロール抜群の制球力と制度の高い変化球で相手打線を翻弄する。
大道星也(花巻東・3年)
球威のあるストレートを軸に打者をねじ伏せる力強いピッチングが持ち味で最速は141キロをマーク。
内田塁斗(盛岡三・3年)
最速138キロの力強いストレートにキレのあるスライダー、大きく沈むシンカー気味のチェンジアップが持ち味の好投手。また打っても中軸を担う打撃力を併せ持つ大黒柱。
小野寺琉希也(盛岡大附・3年)
最速138キロの直球を武器にスライダーやカーブを丁寧に低めに集める好投手。春季大会では100球未満の完封“マダックス”を達成した制球力も光る。
柴田由庵(盛岡大附・3年)
今年3月の手首骨折から復活を期す最速145キロの速球派右腕。力強い投球もさることながら、バッターとしてもスタンドまでもっていくパワーを併せ持つ投打注目の好選手。
奥山翔也(専大北上・3年)
最速140キロのストレートとキレのある変化球が武器でピンチにも動じないエース左腕。
高橋桜介(久慈東・3年)
躍動感あふれるピッチングフォームからコースを丁寧に突く技巧派左腕。ストレートを生かす大きなスライダーは打者のため息が聞こえてきそう。昨秋はチームを東北大会へ導く。
菅原駿(一関工・3年)
ノビのあるストレートとカットボールが武器の好左腕。同中学出身のキャッチャー熊谷優雅との息の合ったピッチングはチームを勢いづける。
佐々木啓介(大船渡・3年)
佐々木朗希投手も背負った背番号1を受け継ぐエースで、内外角を突く制球力と大きく曲がるカーブが武器の好左腕。
岡澤暁史(大船渡・3年)
アンダースローから内外高低を突くピッチングで打者を翻弄。春季県大会準々決勝では3回1/3を投げて6奪三振の好投をみせる。
佐々木空良(盛岡商・3年)
試合経験豊富なエースでキレのあるスライダーとコントロールで打者を打ち取る好投手。
吉田李音(盛岡南・3年)
投手として球威のあるストレートを投げる一方、バッターとしても非凡で一発のある強打者でもその名を馳せる。
北條慎治(花巻東・2年)
最速142キロの本格派の長身右腕で、角度のあるストレートが最大の武器。東北大会決勝や神宮大会のマウンドも経験しており、大きな飛躍が期待される逸材。
佐々木悠大(千厩・2年)
バットの芯を外すツーシームで凡打を積み上げる“グラウンドボールピッチャー”のお手本。ストレートも力強く最速は135キロを計測し、ピンチにも動じないマウンド度胸も魅力。
森岡琉依(水沢工・2年)
小気味よい投球フォームから精度の高いストレートとスライダーを投げ込む技巧派左腕。走者を出しても容易に進塁を許さない器用さも際立つ。
野手
田代旭(花巻東・3年)
打っては高校通算本塁打50本超、守っても二塁送球1秒82をたたき出す強肩強打のプロ注目キャッチャー。
嘉藤誠(黒沢尻工・3年)
ピンチでも冷静な状況判断と矢のような送球でチームを救う好捕手で主将と4番の重責も背負う。
小林優人(盛岡誠桜・3年)
ランナーを制する素晴らしい強肩もさることながら打線の中心として2番に入る強打者。
後藤叶翔(一関学院・3年)
中学時代には岩手県選抜として全国準優勝も果たし、チームでは1年秋からメンバー入りしている県屈指の強肩強打の注目キャッチャー。
佐藤真(千厩・3年)
1年秋から主将としてチームを牽引するチームの大黒柱で、春季県大会の盛岡大附戦では本塁打を含む3安打5打点の大活躍をみせたクラッチヒッター。
髙橋勇慎(盛岡四・3年)
主将としてリーダーシップを発揮する一方、昨秋から全公式戦で多彩な投手陣をリードする好捕手。春季大会は打率6割超で練習の成果を発揮。
佐々木麟太郎(花巻東・2年)
全国の高校野球ファンが注目するスラッガー。高校通算本塁打はすでに70本を超えている。特徴は群を抜くスイングスピードとフライボール革命の路線をゆくアッパースイング。中学時代には生徒会長も務めた人柄で、その責任感の強さや真摯な姿勢もプレーから察することができる高校球児。
菊池敏生(花巻東・3年)
平凡な内野安打もヒットにする俊足は脅威的。その足を生かした外野の守りでは広い守備範囲を誇る。
中沢舟汰(盛岡大附・3年)
昨夏の甲子園を経験している頼れる主将で高校通算本塁打30本の長打もあるバッティングでチームを勝利に導く。
大里侑平(盛岡大附・3年)
強力打線の盛岡大附にあって、巧みなバットコントロールで勝負強い打撃をみせるいぶし銀。
今野悟(盛岡大附・3年)
強打のモリフを象徴するような力強い打撃が魅力。大会前の強豪との招待試合では1試合2本の豪快アーチ。
村上琉紀(久慈東・3年)
昨秋、チームを県準優勝に導いた頼れる4番。中学時代には地区選抜にも選ばれた実力選手で、昨夏も中軸を担い戦った経験豊富な主砲。
男澤凱生(専大北上・3年)
俊足強打の切り込み隊長でチームに勢いを与えるバッティングをみせる。
上関勇駕(盛岡四・3年)
広角に強い打球を弾き返すことができる左の強打者。公式戦初ヒットは1年秋の代打で放った決勝タイムリー。
長川晃己(久慈・3年)
俊足のリードオフマンで守っては広い守備範囲を誇るショートストップ。
佐藤汰星(久慈・3年)
中学岩手県選抜では全国準優勝を経験している好選手。打撃力もさることながらとナインを鼓舞するキャプテンシーも光る。
岩井央侑(久慈・3年)
大谷翔平選手のようなノーステップ打法から強烈な打球を放つ長距離打者。冬には1日千本以上の素振りが実を結び、春季大会では打率3割6分7厘、2本塁打をマークする活躍。
澤田航太(花巻南・3年)
思い切りのいい豪快なスイングが持ち味の強打者で、長打力とともに豊富な試合経験に裏打ちされた勝負強さにも期待。
阿部蒼流(盛岡三・2年)
パワフルな打撃を武器に主砲としてチームを引っ張るスラッガー。春季県大会3位決定戦では1試合に2塁打3本の大暴れをみせる。
遠藤海翔(水沢工・3年)
昨夏38年ぶり4強入りに4番として貢献した強打者。広角に打ち分けることができる器用さと勝負強さを兼ね備える。
鈴木太陽(盛岡市立・3年)
強打のトップバッターで打線に勢いをつける実力選手。春の地区予選では長打4本を放つなど猛打を発揮。
髙橋宏太(盛岡誠桜・3年)
投・内・外をこなすユーティリティープレイヤー。俊敏で守備範囲も広く、打線の中軸も担う好選手。
萩生田煌大(盛岡中央・3年)
中学県選抜全国準優勝メンバーで、内野ゴロもヒットにする俊足は相手守備に息つく間を与えない。その足を生かした守備範囲の広さも際立つ。