
107回目となる全国高校野球選手権岩手大会。昨秋の岩手を制した一関学院に今春県大会優勝の盛岡大附、秋春連続県4強の専大北上に春ベスト4の盛岡誠桜、そして夏3連覇を狙う花巻東。さらに昨秋3位で今春準優勝の久慈や夏3年連続ベスト4の盛岡一、春の大会で私学を2校撃破した水沢工ら公立校にも力があるチームが多く、例年以上に混戦が予想される夏に。

盛岡大附と盛岡誠桜のブロック

盛岡大附は21年夏以来約4年ぶりに岩手を制して第1シードで大会に挑む。「強打」がチームの代名詞と知られているが、今年は勝負強さが武器。春季県大会は手に汗握る接戦の連続で、準々決勝から3試合連続で劇的な逆転勝ちを収めて頂点に駆け上がりました。打線は今春全試合でヒットを放ち打率4割超をマークした許定捷選手、9打点をマークした吉田暉選手を中心に各打者が鋭い打球を打つ。投手陣は昨夏決勝でも登板し気迫あふれるピッチングが持ち味の若林真大投手をはじめ、ともに右横手から140キロ前後の球威あるストレートを投げる雨田優海斗投手と中川暁翔投手も頼もしい存在。春の戦いでみせた逆境での強さを再び発揮して2季連続県制覇なるか注目です。
第1シードと同じブロックに入った第4シードの盛岡誠桜は今春創部初となる県大会ベスト4入りして勢いがある。経験豊富な左腕を揃えた投手陣もさることながら、キャッチャー佐々木秋星選手とショート藤田優月選手、セカンド松谷莉秀選手とセンター今琉成選手のセンターラインも堅守。打ち出したら止まらない打線も得点力が高い。総合力の高さで初優勝を目指す。
同ブロックに入ったシード校の釜石と水沢工も力がある。統合後初となるシード権を獲得し夏に挑む釜石の好投手・佐々木太一投手は注目。ノビのあるストレートとスライダーを武器に春季大会では奪三振率10.14をマークした。佐々木竜選手や岩澤優真選手ら巧打者並ぶ打線も春5試合で計59安打を放ち打力でも競り合うことができるところをみせた。投打で力がある釜石が「鋼鐵の意志」で大舞台を狙う。
水沢工は昨夏を経験している選手も多く能力が高い選手が揃う。今春は私学2校から白星を挙げており、今夏はさらなる躍進が期待される。投手陣では阿部成希投手と菅原琉良選手が揃って身長180センチ台でともに最速140キロ超。打線も一関学院に打ち勝つなど得点力もあり、春季大会の成績を振り返れば菅原大智選手は11安打9打点、強打者でもある菅原琉良選手は打っても9安打2本塁打をマークした。戦力整う水沢工は胆江初の甲子園へ着実に近づいている。
ノーシードにも注目校が多い。古豪の一関一も虎視眈々と頂点を目指す。春季大会では地区予選から44イニングを一人で投げぬいた菊地遼太投手が背番号1を背負う。主にセンターを守る菅原凌選手の勝負強い打撃も注目。昨秋盛岡地区第2代表で今春盛岡大附と2度も接戦を繰り広げた盛岡工は3度目の甲子園を目指す。エースの小比類巻竜汰投手は安定感があり試合を作る投球が光る。また今春サイクルヒットを記録した細川快斗選手がけん引する打線も得点力が高い。
盛岡市立も全員野球で夏に挑む。春季大会は全チーム1位の盗塁数で機動力も光り、得点機には勝負強い荒町蒼馬選手ら中軸がしっかりランナーをかえす得点パターンが印象的。選手16人で夏へ臨む宮古の澤田健人投手も活躍が楽しみな好投手。昨秋は岩泉との連合チームで県大会8強に導き、今春は23回2/3を投げて32個の三振を奪う好投をみせた。野手では久慈翔北の小向爽太選手が走攻守三拍子揃ったショートで主将としてもチームをまとめる。
春季県大会で盛岡一と延長10回タイブレークの激闘を繰り広げた高田、強肩のキャッチャー大木昇陽選手を擁する花巻南も目が離せない。
久慈と専大北上のブロック

46年ぶりとなる夏の頂点を目指す第2シードの久慈。昨秋は県3位、今春は県準優勝を飾りその後の東北大会で白星を挙げてベスト8入りし、甲子園常連校の聖光学院とも互角の打撃戦を繰り広げた。県内屈指のリードオフマンに成長した宇部智也選手は春季大会で地区予選から東北大会までの全8試合でヒットを放ち打率5割をマークし、守備も軽快で特に判断力の高さが際立つプレーを連発。主将としてもチームを引っ張る大黒柱だ。2番に入る田中脩也選手も高い打率を残しており、二人でチャンスメークすれば頼りになる中軸の坂本優真選手や和野虎牙選手らがランナーを返す。その後ろも巧打者が並んでおり、打線は県内チームでもトップクラス。投手陣も最速132キロでキレのあるストレートと多彩な変化球が持ち味の左腕・宇部奨人投手、そして今春好投をみせた右腕・山田千叶良投手ら完投能力があるピッチャーが揃う。県内公立校で最も甲子園に近いチームだ。
第3シードから優勝を目指す専大北上は多彩なピッチャーたちが試合を作る。左腕の秋山幸輝投手はコントロール抜群。変則フォームの中田悠斗投手や県大会3位決定戦で完投した右腕の吉田直貴選手らによる巧みな継投で相手を封じる。打線は春季大会で4本の本塁打を放ち長打の数は一関学院と並んで全チーム1位。県大会でブレークした下坂侑凛選手の積極的なバッティングも注目だ。
同じブロックに入った一関学院と盛岡一も強さが際立っている。昨秋2連覇を達成した一関学院は投打ともに実力選手が揃う。春季大会で3本塁打8打点と大暴れした強打者の小岩龍輝選手や古川俊介選手らが並ぶ打線は強力。投手陣はエースナンバーを背負う左腕の佐々木遼投手や速球派の大下峻希投手、本格派左腕の鴫原光喜投手ら誰が先発しても試合を任せられるピッチャーが揃う。一年生ながらすでに公式戦に登板している鈴木遥登投手も注目。
3年連続ベスト4で今年こそ壁を破り「聖地で1勝」を目標に掲げる盛岡一も投打充実。エースの川崎煌成投手は1年生の時からマウンドに上がっていて経験値が高く、最速135キロのストレートに変化球を織り交ぜて打者を翻弄する。さらに春季大会では紺野行広投手の好投も光り、大きな変化球で空振りを奪う安田圭吾選手も頼りになる。その投手陣を援護する打線では、リードオフマンとして打線も引っ張る安田圭吾選手が巧みなバットコントロールと勝負強さで存在感を放つ。春の大会では12安打10打点でさらに10得点をマークし打率は4割超。その後ろには千葉杏吏選手や主将の坂本晃太選手らが並び打線に切れ目がない。満を持して1978年以来の夏の甲子園を目指す。
このブロックのノーシードの注目校はやはり花巻東。18年ぶりのノーシードから大会3連覇を狙う。大会屈指の好投手・金野快投手は最速142キロの力強いストレートやスライダー・フォークといった変化球をコーナーに高い精度で決めて打者を打ち取るまさにエース。センバツでも登板した萬谷堅心投手や一年生の最速141キロ右腕の菅原駿投手ら投手陣も豊富。打撃陣も長打力がある新田光志朗選手や俊足巧打の森下祐帆選手、強打のキャッチャー高橋蓮太郎選手など実力選手が並ぶ。攻守ともにレベルが高く優勝候補の一角であることに変わりはない。
その花巻東と初戦で対戦する盛岡中央はキャッチャー立花七星選手を中心に守り勝つチーム。打線では広角に鋭い打球を放つ村木琥旺選手の打撃も注目。ちなみに立花選手と花巻東の金野投手は中学時代、ともに久米島メモリアルカップ東北選抜に選出された間柄。3年生になってむかえる今夏の対戦は熱い。
ノーシードには昨春のチーム躍進の原動力となった熊谷航投手を擁する大船渡、昨年の秋は花巻東に今年の春は一関学院と好ゲームを繰り広げた水沢も力がある。そして名将・小山監督率いる一関二は強打者の勝部聖選手と経験豊富なエースの佐々木惺珂投手を中心に上位をうかがう。